“ ビジネスの構造から言うと,出版ビジネスは,やはり,紙の束を売っているとしか思えない。価格はサイズや束ね方により異なるわけで,決して時間経過によるものではない。一般的には,単行本で発行されて,2,3年後,文庫本になれば安くなるが,物によっては,全集で高い値段でも売ったりする。価格の決定というのは,実は,サイズ,束ね方によって決定されていると考えられる。
これに関して,我々が今,一番頭を悩ませている問題がある。かつて,「新潮文庫の100冊」という100冊分の文庫を1枚のCD-ROMに出して売るという商売で,それなりの成功を収め,その延長線上で,個人の作家の全集を1枚のCD-ROMで出してみようじゃないか,という提案が出た。
数年前に亡くなられた安部公房さんは,作家として,最も早い段階でワープロを導入した。「亡くなられたあと,遺作がフロッピーの中に残されていた」ことで話題にもなった人で,電子メディアで出しても面白いかと検討しているのだが,実際,安部さんの全集は,1冊5,100円くらいのハードカバーで箱に入れたものを全30巻出すので,全て買うと約17万円となる。データ量としては,CD-ROM1枚に十分入ってしまう。それなら,CD-ROM1枚を17万円で売るのかとなると答が出ない。つまり,我々が売っている安部公房全集の何に対して読者にお金を出していただいているのか,というところを露骨に突きつけられている。 ”

http://www.jagat.or.jp/story_memo_view.asp?StoryID=4813